法人成りした場合、倒産防止共済はどうなる?

所得税

『法人成り』を考えているんだけど、その場合、倒産防止共済ってどうなるんだろう、、、?

こんにちは。税理士の城戸です。

今回は、そんな疑問を持たれている方向けの記事です。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

倒産防止共済のよくある質問、 Part2です。

『法人成り』後、倒産防止共済は引き継げる。

倒産防止共済は、『法人成り』後、その法人に引き継ぐこと(承継)が可能です。

ただし、次の要件を満たす必要があります。

「引き継ぎ」要件
  • 『法人成り』後、3ヶ月以内に承継の申出をすること。
  • その法人が、中小企業者であること。
  • その法人が、共済金の返済義務などを引き受けること。

「事業の全部譲渡」等が前提です。

『法人成り』後、3ヶ月以内に承継の申出をすること。

その法人(新契約者)が、『法人成り』後、3ヶ月以内に承継の申出(承継手続き)をする必要があります。

具体的には、「契約承継申出書」と添付書類(印鑑証明書や共済契約締結証書、履歴事項全部証明書など)を、登録取扱機関に提出します。

中小機構に、登録取扱機関を通じて「承継の申出」をします。

登録取扱機関、、、?

登録取扱機関とは、加入手続きをした商工会議所や金融機関などのこと。

金融機関から加入した場合には、掛金の口座振替を行っている本支店が登録取扱機関になります。

もしも「?」の場合は、最新の「共済契約締結証書」や「掛金納付状況兼領収書」(毎年2月下旬に送付される)でも、確認できます。

倒産防止共済の各種手続きの窓口ですね。

「契約承継申出書」は、『資料請求フォーム(共済サポート navi)』より請求できます。(8桁の共済契約者番号が必要。こちらも、共済契約締結証書等で確認できます。)

書類は、郵送にて1週間程度で届きます。

ただし、到着が遅れる場合もありますので、ご注意を。
ご請求は、お早めに。

その他詳細は、共済サポートnaviの『事業の全部譲渡(法人成り)/承継手続き』をご確認ください。(共済契約締結証書を紛失した場合などの対応についても、記載されています。)

その法人が、中小企業者であること。

その法人(新契約者)は、資本金・従業員数のいずれかが条件を満たす「中小企業者」である必要があります。

そもそも、加入資格のある法人でなければならない、ということです。

業種ごとに、資本金・従業員数が定められています。

加入資格に、「引き続き1年以上事業を継続している中小企業者」とあるんだけど、、、?

個人事業の開業時から通算して1年以上事業を継続していれば、OKです。

『法人成り』の場合は、個人事業の期間も含めて考えます。

「新規加入」の場合と同じですね。

その他「加入資格」の詳細は、共済サポートnaviの『経営セーフティ共済の加入資格』をご確認ください。

ちなみに、医療法人の場合は「引き継ぎ」不可ですので、ご注意を。

その法人が、共済金の返済義務などを引き受けること。

その法人(新契約者)は、その個人事業主(現契約者)の次の義務を引き受ける必要があります。

  • 共済金・一時貸付金の返済義務
  • 共済金・一時貸付金に関する違約金の支払義務

『法人成り』の前に「借りたお金」の返済義務も、そのまま引き継ぎますよ、、、ということです。

当然といえば当然、ですね。
帳消しにしてくれたら、嬉しいですけど、、、。

ちなみに、共済金とは、「突然の取引先の倒産」といった「もしも」のときの借入金。

無担保・無保証で、最大8,000万円まで借入可能です。(利率は、実質10%、、、)

一時貸付金は、「もしも」以外で事業資金が必要となったときの借入金。

解約手当金の範囲内で、利率は年0.9%です。(令和6年4月1日時点)

どちらも、返済期日までに返済できない場合は、年14.6%の違約金(延滞利息)が発生します。

年14.6%、、、。
なかなかですね、、、。

共済金や一時貸付金については、下記ブログでも解説しています。

『法人成り』後、倒産防止共済を引き継がない場合は?

ところで、倒産防止共済を引き継がなかった場合って、どうなるの?

その場合は、「みなし解約」となります。

『法人成り』(事業の全部譲渡)の時点で解約されたものとみなされる、ということです。

「みなし解約」の場合の解約手当金の支給率は、次のとおり。(解約手当金は、「積み立てた掛金総額✖️支給率」です。)

掛金を納付した月数解約手当金の支給率(みなし解約)
1ヶ月〜11ヶ月0%
12ヶ月〜23ヶ月85%
24ヶ月〜29ヶ月90%
30ヶ月〜35ヶ月95%
36ヶ月〜39ヶ月100%
40ヶ月〜100%
共済サポートnavi 「共済契約の解約」より。

36ヶ月未満での「みなし解約」の場合は、「目減り」や「掛け捨て」となります。

特に、12ヶ月未満では「掛け捨て」となってしまいますので、ご注意ください。

「掛け捨て」は、避けたいところですね。

『法人成り』を検討する際は、この「倒産防止共済」を引き継ぐのか or 引き継がないのか?も考えておきましょう。

引き継ぐ場合は、3ヶ月以内の「承継手続き」を忘れずに。

引き継がない場合は、「みなし解約」も踏まえて、『法人成り』のタイミングを考えましょう。

解約手当金(相当額)は課税されます。

引き継ぐ場合(一定の場合)も、引き継がない場合も、、、ですので、その点もご注意ください。

事業所得の雑収入になります。
『法人成り』は計画的に。

まとめ。

今回は、『法人成りした場合、倒産防止共済はどうなる?』について解説しました。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

  • 3つの要件を満たせば、倒産防止共済は引き継げる。
  • 1つ目は、『法人成り』後、3ヶ月以内に承継の申出をすること。
  • 2つ目は、その法人が中小企業者であること。
  • 3つ目は、その法人が共済金の返済義務などを引き受けること。
  • 引き継がない場合は、「みなし解約」となる。36ヶ月未満は、「目減り」や「掛け捨て」となるので、要注意。
  • 引き継いでも(一定の場合)引き継がなくても、解約手当金(相当額)は課税される。
  • 『法人成り』は、計画的に。

このブログは、更新日時点における法令等に基づいて作成しています。