小規模企業共済の貸付制度。節税や貯蓄だけではありません!

所得税

小規模企業共済に貸付制度
があるって本当?
しかも、、、低金利?

こんにちは、税理士の城戸です。
今回は、そんな疑問を持たれている方向けの記事です。

小規模企業共済の“隠れメリット”でもある「貸付制度」について、解説します。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

小規模企業共済の貸付制度

隠れメリット?

小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金積立制度、「小規模企業共済」。
“節税しながら、将来のための貯蓄もできる”制度として、有名ですね。

でも実は、この制度にはもうひとつ大きなメリットがあるんです。
それが「貸付制度」。
積み立てたお金を、いざというときに自分で借りられる制度です。

まだまだ知らない方もいる
ようですね。小規模企業共
済の“隠れメリット”です。

貸付制度の概要

小規模企業共済の貸付制度には、「一般貸付」と「特別貸付」があります。
以下、簡単に解説します。

一般貸付

「もしも」のときに、手軽に素早く事業資金等の借入れができる制度です。
次の要件を満たした場合に利用できます。

借入資格要件
  • 加入後12ヶ月以上経過していること(12ヶ月以上掛金を納付していること)。
  • 貸付限度額(掛金総額の7〜9割)が、10万円以上であること。

なお、要件を満たした場合
『借入資格取得通知書』が
送付されます。

借入条件等は、次のとおり。

借入窓口借入窓口として登録した金融機関。登録していない場合は、商工組合中央金庫(商工中金)の本支店。
借入限度額掛金の範囲内(掛金納付月数により、掛金総額の7〜9割)で、10万円以上2,000万円以内。
借入金の使途運転資金、その他事業関連資金、生活資金
借入期間借入金額に応じて、6ヶ月〜60ヶ月。
利率年1.5%
担保・保証人不要
延滞利子年14.6%

利率は低金利(年1.5%)で、担保・保証人は不要。
借入金の使途は“なんでもOK”といった感じですね。

さらに、借入窓口が商工中金の場合は、即日貸付もできる(審査不要)とのことです。

まさに、“手軽に素早く”
事業資金等の借入れが
できる制度です。

ただし、返済が滞ると年14.6%の延滞利子が発生しますので、その点ご注意ください。

その他詳細は、共済サポートnavi /一般貸付制度まで。
最新の利率については、共済サポートnavi /貸付制度の最新の利率をご確認ください。

特別貸付

「特別な事情」がある場合にのみ、借入れができる制度です。
貸付けの種類は次のとおり。

貸付けの種類「特別な事情」
緊急経営安定貸付け経済環境の変化等により、売上が(一時的に)減少した場合
傷病災害時貸付け病気・怪我により入院した場合や、災害により被害を受けた場合
福祉対応貸付け共済契約者や同居親族の福祉向上のために、住居(事業所)の改築等をする場合
創業転業時・新規事業展開等貸付け新規開業・転業を行う場合や、新たな事業分野に進出する場合
事業承継貸付け事業承継(個人事業の事業資産の取得やその会社の株式等の取得)をする場合
廃業準備貸付け個人事業の廃業や会社の解散を行う場合

なお、いずれも利率は年0.9%で、(一般貸付よりも)さらに低金利です。
担保・保証人も不要。

ただし、借入資格要件として商工会議所等の確認が必要だったり、借入金の使途も(一般貸付のように)“なんでもOK”ではありませんので、ご注意を。

詳細は共済サポートnavi /特別貸付け制度をご確認ください。

一般貸付のように、“手軽
に素早く”とまではいきま
せん。

とはいえ、(「一般貸付」よりも)さらに低金利の「特別貸付」もある、ということは覚えておきましょう。

貸付制度に関するQ&A

以下、貸付制度(一般貸付)に関するQ&A(よくあるご質問)です。
ぜひ、参考にしてみてください。

【Q1】借入窓口の「登録」ってどうしたらいい?

一般貸付の借入資格要件を満たした場合に送付される『借入資格取得通知書』に『借入窓口の登録申出書』も綴じ込まれていますので、それを返送すればOKです。

なお、『登録店申出書』を中小機構に郵送することで登録することもできます。
詳しくは、共済サポートnavi /『登録店申出書(様式小804-1)』で手続きをするをご確認ください。

ただし、登録できない金融機関(ネットバンクやゆうちょ銀行等)もありますので、ご注意を。
事前に一般貸付の借入窓口として登録可能かどうか、その金融機関の支店に確認しておくようにしましょう。

また、いつから借入れが可能になるか等についても、ご確認を。
その金融機関が登録されるまでの間は借入れができないといった場合もありますので、ご注意ください。(『借入資格取得通知書』等に記載されているかと思います)

ちなみに、商工中金の本支店
を借入窓口としたい場合は、
そもそも登録は不要です。

【Q2】借入れまでどのくらいかかる?

借入窓口を「商工中金の本支店」としている場合には、午後2時までに手続きをすれば「その日」のうちに借入金を受け取ることができます。(とはいえ、手続きはお早めに)

一方、「商工中金以外の金融機関」を借入窓口としている場合には、手続きから借入れまでに「数日」(2〜3日程度)かかる場合があります。
事前に、その金融機関に問い合わせてみましょう。

商工中金の方が、
よりスムーズですね。

なお、借入窓口は変更することもできます。
詳しくは、共済サポートnavi /貸付制度の利用/手続きの流れをご確認ください。(変更してすぐに借入れができるわけではありませんので、その点ご注意を)

【Q3】 どうしてものときは、返済期日を延ばすことはできる?

残念ながら、返済期日を延ばすことはできません。
ただし、「同額借換」により新たな借入額の利子を支払うことで、実質的に返済期日を延ばすことは可能です。(「同額借換」とは、新たな借入れに借り換えることです)

手続きは必要ですが、利子
を支払えば、しばらく返済
しなくてもOKということ
ですね。

なお、「増額借換」(借入額を増やしたい場合)や「減額借換」(借入金の一部を返済したい場合)もありますので、ご参考に。

借入限度額が増えれば、「増額借換」により追加借入れも可能です。

【Q4】借りたお金を、資産運用などに使うこともできる?

一般貸付の借入金の使途は、「運転資金、その他事業関連資金、生活資金」となっています。
要するに、“なんでもOK”という感じなんです。

ですので、もちろん資産運用に使うこともできます。
その他、そのお金で(再度)掛金を支払ったり、事業投資にまわしたり、、、もありますね。

ただ、「もしも」以外で貸付制度を利用しすぎると、本当に「もしも」のときに借入れができなくなる可能性もあります。
また、借入金を返済しない場合は、将来受け取る共済金も少なくなります。(借入金の未返済分は、共済金から控除されます)

こういった点も理解したうえで、貸付制度を上手に活用していきましょう。

「もしも」のときの保険
としておいておく、とい
うのもいいですね。

まとめ

今回は、『小規模企業共済の貸付制度。節税や貯蓄だけではありません!』について解説しました。

小規模企業共済には、積み立てたお金を「いざ」というときに自分で借りられる「貸付制度」もあります。
節税や貯蓄だけではないんですね。
上手に活用していきましょう。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

  • 小規模企業共済には、貸付制度(一般貸付と特別貸付)がある。
  • 貸付制度とは、積み立てたお金を「いざ」というときに自分で借りられる制度。
  • 一般貸付は、「もしも」のときに手軽に素早く借入れができる。
  • 利率は年1.5%で、担保・保証人は不要。借入金の使途は“なんでもOK”。
  • ただし、加入後12ヶ月以上経過していること等の要件あり。
  • 特別貸付は、「特別な事情」がある場合にのみ借入れができる。
  • 利率は年0.9%で、担保・保証人は不要。
  • ただし、借入金の使途は“なんでもOK”ではないし、要件あり。
  • 貸付制度を上手に活用しよう。

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