小規模企業共済の共済金。いくら受け取れる?請求事由?

所得税

小規模企業共済の共済金。
どのくらい、受け取れる?
事由によって金額変わる?
20年未満だと、元本割れる?

こんにちは。税理士の城戸です。

今回は、そんな疑問を持たれている方向けの記事です。

(法人の解散や廃業時などに受け取ることができる)小規模企業共済の共済金について、解説します。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

小規模企業共済の共済金には、4つの種類がある。

小規模企業共済の共済金には、「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」の4つの種類があり、請求事由(共済事由)ごとに、受け取れる共済金の種類が異なります。

請求事由とは、共済金を
請求する理由ですね。

どの共済金に該当するかで、共済金の金額も変わります。

以下、共済契約者が個人事業主である場合と、経営者や会社役員である場合とに分けて解説します。

なお、個人事業主の共同経営者である場合については、今回は割愛します。共済サポートnavi「共済金等請求・解約」をご確認ください。

個人事業主の場合

請求事由と(対応する)共済金の種類は、次のとおりです。

請求事由共済金の種類
・個人事業の廃業
・共済契約者の死亡
共済金A
・老齢給付共済金B
・法人成りにより、加入資格がなくなった場合※準共済金
・法人成りにより、加入資格はなくならなかったものの、解約した場合※
・任意解約
・機構解約
解約手当金
※平成22年12月以前に小規模企業共済に加入し、全額金銭出資により法人成りをした場合は「共済金A」となります。

ただし、「共済金A」「共済金B」の請求事由が生じた時点で掛金納付月数が6ヶ月未満である場合、「準共済金」「解約手当金」の請求事由が生じた時点で掛金納付月数が12ヶ月未満である場合には、そもそも共済金を受け取ることができませんので、ご注意ください。

「掛け捨て」リスクもある、、、
ということです。
加入は、計画的に。

ちなみに、法人成り後、一定の要件を満たせば、小規模企業共済は継続できます。

詳細は、共済サポートnavi「契約内容変更-掛金納付月数の通算(同一人通算)」をご確認ください。

老齢給付、、、とは?

「老齢給付」とは、共済契約者(個人事業主)が65歳以上で、かつ、掛金納付月数が180ヶ月以上(15年以上)の場合に生じる請求事由です。

事業を続けたまま、共済金を受け取ることができます。

「任意解約」とは、自己都合による解約。

「機構解約」とは、中小機構が強制的に行う解約です。(掛金を12ヶ月以上滞納した場合など、、、)

事業を続けたまま、、、
という選択肢もあるんですね。

なお、「個人事業の廃業」は、複数の事業を営んでいる場合、すべての事業の廃止が必要となりますので、ご注意ください。

経営者や会社役員の場合

請求事由と(対応する)共済金の種類は、次のとおりです。

請求事由共済金の種類
・会社等の解散・破産共済金A
・疾病・負傷による役員退任
・65歳以上での役員退任
・共済契約者の死亡
・老齢給付
共済金B
・65歳未満での役員退任
(会社等の解散や疾病・負傷以外)
準共済金
・任意解約
・機構解約
解約手当金

ただし、個人事業主と同様、「共済金A」「共済金B」の請求事由が生じた時点で掛金納付月数が6ヶ月未満である場合、「準共済金」「解約手当金」の請求事由が生じた時点で掛金納付月数が12ヶ月未満である場合には、そもそも共済金を受け取ることができませんので、ご注意ください。

「掛け捨て」は、避けたいところです。
最初の11ヶ月は、掛金月額1,000円という選択肢も、、、。

老齢給付は、個人事業主と同じ、、、だよね?

そうですね。

共済契約者(経営者や会社役員)が65歳以上で、かつ、掛金納付月数が180ヶ月以上(15年以上)の場合に、請求事由として「老齢給付」の選択が可能となります。

解散や役員退任せずとも、事業を続けたまま、共済金を受け取れます。

なお、(会社等の解散や疾病・負傷以外の)「役員退任」については、65歳以上と65歳未満とでは、共済金の種類が異なります。

受け取れる共済金の金額も変わりますので、ご注意ください。

65歳以上&掛金納付15年以上で
選択肢が増えますね。

小規模企業共済の共済金、いくら受け取れる?

受け取れる共済金の金額は、共済金の種類ごとに、小規模企業共済法施行令(別表第一、別表第二)で定められています。

予定利回り1%として、それぞれ、金額が設定されています。

掛金月額1万円の場合

掛金納付年数 5年掛金合計 600,000円
共済金A621,400円
共済金B614,600円
準共済金600,000円
解約手当金480,000円
掛金納付年数10年掛金合計1,200,000円
共済金A1,290,600円
共済金B1,260,800円
準共済金1,200,000円
解約手当金1,020,000円
掛金納付年数15年掛金合計1,800,000円
共済金A2,011,000円
共済金B1,940,400円
準共済金1,800,000円
解約手当金1,665,000円
掛金納付年数20年掛金合計2,400,000円
共済金A2,786,400円
共済金B2,658,800円
準共済金2,419,500円
解約手当金2,400,000円

掛金月額3万円の場合

掛金納付年数 5年掛金合計1,800,000円
共済金A1,864,200円
共済金B1,843,800円
準共済金1,800,000円
解約手当金1,440,000円
掛金納付年数10年掛金合計3,600,000円
共済金A3,871,800円
共済金B3,782,400円
準共済金3,600,000円
解約手当金3,060,000円
掛金納付年数15年掛金合計5,400,000円
共済金A6,033,000円
共済金B5,821,200円
準共済金5,400,000円
解約手当金4,995,000円
掛金納付年数20年掛金合計7,200,000円
共済金A8,359,200円
共済金B7,976,400円
準共済金7,258,500円
解約手当金7,200,000円

なお、「共済金A」「共済金B」「準共済金」については、上記金額に、付加共済金が加算される場合があります。

付加共済金とは、毎年度の運用収入等に応じて、経済産業大臣が定める率により算定される金額です。

もちろん、1万円、3万円以外の掛金月額の場合も同様です。

詳細は、共済サポートnavi「共済金の額の算定方法」をご確認ください。

令和7年度支給率は、1.047%。
そんなに大きな金額ではありません、、、。

その他掛金月額の場合

その他、例えば、掛金月額5万円の場合は、掛金月額1万円の金額を、それぞれ5倍した金額と考えてもらってOKです。

「共済金A」「共済金B」「準共済金」については、掛金納付月数ごとに掛金月額500円(1口)あたりの金額が定められており、掛金月額に応じて「✖️口数」で算定されるからです。

例えば、掛金月額10,000円の場合は「✖️20口」、掛金月額50,000円の場合は「✖️100口」となります。

「解約手当金」についても、掛金納付月数ごとの割合(80%〜120%)が定められており、納付した掛金の合計額にその割合を乗じて算定されます。

ただし、掛金の増額・減額がない前提ですので、その点ご注意ください。

掛金月額3万円の場合も
3倍になっていますね。

元本割れにも、ご注意を。

いずれにしても、「共済金A」が1番多く、続いて「共済金B」「準共済金」「解約手当金」の順となります。

「老齢給付」より「廃業・解散」の方が、通常の「役員退任」の場合であれば、65歳未満より65歳以上の方が、共済金の金額は多くなりますね。

解約手当金は、任意性が高いため、低めに設定されています。

共済金を受け取るタイミングを
考える際の、1つの参考にしてください。

なお、掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満で「任意解約」した場合には、解約手当金の金額は掛金合計額を下回ります。

つまり、「元本割れ」となってしまいますので、ご注意ください。(あくまでも、「任意解約」の場合です)

まとめ

今回は、『小規模企業共済の共済金。いくら受け取れる?請求事由?』について解説しました。

どういう理由で請求するかによっても、共済金の金額は変わります。

小規模企業共済を「お得な」制度とするためにも、受取時のことも、しっかりと考えるようにしましょう。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

  • 小規模企業共済の共済金には、4つの種類がある。
  • どういう理由で請求するかによって、受け取れる共済金の金額(種類)も変わる。
  • 共済金の金額は、「廃業・解散」>「老齢給付」
  • 役員退任の場合は、「65歳以上」>「65歳未満」
  • 掛金納付月数が12ヶ月未満の場合は、「掛け捨て」リスクあり。
  • 「任意解約」&掛金納付20年未満は、「元本割れ」となる。
  • 小規模企業共済を「お得な」制度とするためにも、受取時も大事。

ちなみに、、、
「機構解約」の場合、解約手当金
を請求できないこともあります。
ご注意ください。

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