
小規模企業共済の共済金。
どのくらい、受け取れる?
事由によって金額変わる?
20年未満だと、元本割れる?
こんにちは。税理士の城戸です。
今回は、そんな疑問を持たれている方向けの記事です。
(法人の解散や廃業時などに受け取ることができる)小規模企業共済の共済金について、解説します。
ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。
小規模企業共済の共済金には、4つの種類がある。
小規模企業共済の共済金には、「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」の4つの種類があり、請求事由(共済事由)ごとに、受け取れる共済金の種類が異なります。

請求事由とは、共済金を
請求する理由ですね。
どの共済金に該当するかで、共済金の金額も変わります。
以下、共済契約者が個人事業主である場合と、経営者や会社役員である場合とに分けて解説します。
なお、個人事業主の共同経営者である場合については、今回は割愛します。共済サポートnavi「共済金等請求・解約」をご確認ください。
個人事業主の場合
請求事由と(対応する)共済金の種類は、次のとおりです。
請求事由 | 共済金の種類 |
・個人事業の廃業 ・共済契約者の死亡 | 共済金A |
・老齢給付 | 共済金B |
・法人成りにより、加入資格がなくなった場合※ | 準共済金 |
・法人成りにより、加入資格はなくならなかったものの、解約した場合※ ・任意解約 ・機構解約 | 解約手当金 |
ただし、「共済金A」「共済金B」の請求事由が生じた時点で掛金納付月数が6ヶ月未満である場合、「準共済金」「解約手当金」の請求事由が生じた時点で掛金納付月数が12ヶ月未満である場合には、そもそも共済金を受け取ることができませんので、ご注意ください。

「掛け捨て」リスクもある、、、
ということです。
加入は、計画的に。
ちなみに、法人成り後、一定の要件を満たせば、小規模企業共済は継続できます。
詳細は、共済サポートnavi「契約内容変更-掛金納付月数の通算(同一人通算)」をご確認ください。

老齢給付、、、とは?
「老齢給付」とは、共済契約者(個人事業主)が65歳以上で、かつ、掛金納付月数が180ヶ月以上(15年以上)の場合に生じる請求事由です。
事業を続けたまま、共済金を受け取ることができます。
「任意解約」とは、自己都合による解約。
「機構解約」とは、中小機構が強制的に行う解約です。(掛金を12ヶ月以上滞納した場合など、、、)

事業を続けたまま、、、
という選択肢もあるんですね。
なお、「個人事業の廃業」は、複数の事業を営んでいる場合、すべての事業の廃止が必要となりますので、ご注意ください。
経営者や会社役員の場合
請求事由と(対応する)共済金の種類は、次のとおりです。
請求事由 | 共済金の種類 |
・会社等の解散・破産 | 共済金A |
・疾病・負傷による役員退任 ・65歳以上での役員退任 ・共済契約者の死亡 ・老齢給付 | 共済金B |
・65歳未満での役員退任 (会社等の解散や疾病・負傷以外) | 準共済金 |
・任意解約 ・機構解約 | 解約手当金 |
ただし、個人事業主と同様、「共済金A」「共済金B」の請求事由が生じた時点で掛金納付月数が6ヶ月未満である場合、「準共済金」「解約手当金」の請求事由が生じた時点で掛金納付月数が12ヶ月未満である場合には、そもそも共済金を受け取ることができませんので、ご注意ください。

「掛け捨て」は、避けたいところです。
最初の11ヶ月は、掛金月額1,000円という選択肢も、、、。

老齢給付は、個人事業主と同じ、、、だよね?
そうですね。
共済契約者(経営者や会社役員)が65歳以上で、かつ、掛金納付月数が180ヶ月以上(15年以上)の場合に、請求事由として「老齢給付」の選択が可能となります。
解散や役員退任せずとも、事業を続けたまま、共済金を受け取れます。
なお、(会社等の解散や疾病・負傷以外の)「役員退任」については、65歳以上と65歳未満とでは、共済金の種類が異なります。
受け取れる共済金の金額も変わりますので、ご注意ください。

65歳以上&掛金納付15年以上で
選択肢が増えますね。
小規模企業共済の共済金、いくら受け取れる?
受け取れる共済金の金額は、共済金の種類ごとに、小規模企業共済法施行令(別表第一、別表第二)で定められています。
予定利回り1%として、それぞれ、金額が設定されています。
掛金月額1万円の場合
掛金納付年数 5年 | 掛金合計 600,000円 |
共済金A | 621,400円 |
共済金B | 614,600円 |
準共済金 | 600,000円 |
解約手当金 | 480,000円 |
掛金納付年数10年 | 掛金合計1,200,000円 |
共済金A | 1,290,600円 |
共済金B | 1,260,800円 |
準共済金 | 1,200,000円 |
解約手当金 | 1,020,000円 |
掛金納付年数15年 | 掛金合計1,800,000円 |
共済金A | 2,011,000円 |
共済金B | 1,940,400円 |
準共済金 | 1,800,000円 |
解約手当金 | 1,665,000円 |
掛金納付年数20年 | 掛金合計2,400,000円 |
共済金A | 2,786,400円 |
共済金B | 2,658,800円 |
準共済金 | 2,419,500円 |
解約手当金 | 2,400,000円 |
掛金月額3万円の場合
掛金納付年数 5年 | 掛金合計1,800,000円 |
共済金A | 1,864,200円 |
共済金B | 1,843,800円 |
準共済金 | 1,800,000円 |
解約手当金 | 1,440,000円 |
掛金納付年数10年 | 掛金合計3,600,000円 |
共済金A | 3,871,800円 |
共済金B | 3,782,400円 |
準共済金 | 3,600,000円 |
解約手当金 | 3,060,000円 |
掛金納付年数15年 | 掛金合計5,400,000円 |
共済金A | 6,033,000円 |
共済金B | 5,821,200円 |
準共済金 | 5,400,000円 |
解約手当金 | 4,995,000円 |
掛金納付年数20年 | 掛金合計7,200,000円 |
共済金A | 8,359,200円 |
共済金B | 7,976,400円 |
準共済金 | 7,258,500円 |
解約手当金 | 7,200,000円 |
なお、「共済金A」「共済金B」「準共済金」については、上記金額に、付加共済金が加算される場合があります。
付加共済金とは、毎年度の運用収入等に応じて、経済産業大臣が定める率により算定される金額です。
もちろん、1万円、3万円以外の掛金月額の場合も同様です。
詳細は、共済サポートnavi「共済金の額の算定方法」をご確認ください。

令和7年度支給率は、1.047%。
そんなに大きな金額ではありません、、、。
その他掛金月額の場合
その他、例えば、掛金月額5万円の場合は、掛金月額1万円の金額を、それぞれ5倍した金額と考えてもらってOKです。
「共済金A」「共済金B」「準共済金」については、掛金納付月数ごとに掛金月額500円(1口)あたりの金額が定められており、掛金月額に応じて「✖️口数」で算定されるからです。
例えば、掛金月額10,000円の場合は「✖️20口」、掛金月額50,000円の場合は「✖️100口」となります。
「解約手当金」についても、掛金納付月数ごとの割合(80%〜120%)が定められており、納付した掛金の合計額にその割合を乗じて算定されます。
ただし、掛金の増額・減額がない前提ですので、その点ご注意ください。

掛金月額3万円の場合も
3倍になっていますね。
元本割れにも、ご注意を。
いずれにしても、「共済金A」が1番多く、続いて「共済金B」「準共済金」「解約手当金」の順となります。
「老齢給付」より「廃業・解散」の方が、通常の「役員退任」の場合であれば、65歳未満より65歳以上の方が、共済金の金額は多くなりますね。
解約手当金は、任意性が高いため、低めに設定されています。

共済金を受け取るタイミングを
考える際の、1つの参考にしてください。
なお、掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満で「任意解約」した場合には、解約手当金の金額は掛金合計額を下回ります。
つまり、「元本割れ」となってしまいますので、ご注意ください。(あくまでも、「任意解約」の場合です)
まとめ
今回は、『小規模企業共済の共済金。いくら受け取れる?請求事由?』について解説しました。
どういう理由で請求するかによっても、共済金の金額は変わります。
小規模企業共済を「お得な」制度とするためにも、受取時のことも、しっかりと考えるようにしましょう。
ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

ちなみに、、、
「機構解約」の場合、解約手当金
を請求できないこともあります。
ご注意ください。

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