倒産防止共済、、、デメリットや注意点は?

法人税

倒産防止共済、デメリットってある?
加入を検討中なんだけど、、、。

こんにちは。税理士の城戸です。

今回は、そんな疑問を持たれている方(個人事業主&法人)向けの記事です。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

前回は、メリット編。
今回は、デメリット編です。

セーフティネットは、無利子ではない。

倒産防止共済のメリットの1つ、共済金貸付制度。

ざっくり言うと、取引先の倒産という「もしも」のときに、無担保・無保証で速やかに借入れができる制度です。

「いざ」というときの、セーフティネットですね。

ただ、この「共済金貸付制度」。

無担保・無保証ではありますが、、、実質無利子ではありません。

この制度を利用した場合、その借入額の「10分の1」に相当する金額が、掛金総額から控除されます。

没収される(掛金の権利が消滅する)ということです。

最大8,000万円の借入れであれば、掛金積立額800万円の没収です、、、。

解約しても、戻ってきません。

「もしも」のときのセーフティネットではありますが、「借入額の10分の1相当額の没収」という大きなデメリットがあります。

「10分の1」は、なかなかです。
本当に本当の「いざ」というときの制度ですね。

40ヶ月未満での解約は、「目減り」「掛け捨て」になる。

毎月納付する掛金は、「貯蓄」にもなります。

掛金を40ヶ月以上納付している場合、解約時に、「掛金総額の100%」が戻ってくるからです。

通常の解約(任意解約)の場合です。

ただし、あくまでも、掛金を40ヶ月以上納付している場合、、、。

40ヶ月未満の場合は、「目減り」や「掛け捨て」となりますので、ご注意ください。

次の表は、解約手当金の支給率です。
解約手当金は、「積み立てた掛金総額 ✖️ 支給率」で算定されます。

掛金を納付した月数解約手当金の支給率(任意解約)
1ヶ月〜11ヶ月0%
12ヶ月〜23ヶ月80%
24ヶ月〜29ヶ月85%
30ヶ月〜35ヶ月90%
36ヶ月〜39ヶ月95%
40ヶ月〜100%
共済サポートnavi 「共済契約の解約」より。

掛金納付月数が少なくなればなるほど、少しずつ「目減り」していき、12ヶ月未満での解約は、「掛け捨て」(解約手当金0円)となってしまいます。

倒産防止共済のデメリットの1つですね。

加入を検討の際は、「40ヶ月以上、加入するかどうか(加入できるかどうか)」も1つの判断基準です。

特に、短期解約(12ヶ月未満の解約)はNGですので、加入は計画的に。

掛金は途中でも減額可能です。(最低5,000円まで)
「どうしても」のときは、「掛金の減額」も、、、。

毎月、お金が出ていく。

倒産防止共済に加入した場合、毎月の掛金の納付が必要です。

つまり、「毎月お金が出ていく」ということです。

掛金の設定や前納の選択をする際は、節税だけではなく、資金繰りにも注意が必要です。

資金に余裕があることが、大前提です。

でも、資金が必要となった場合、解約もできる、、、よね?

もちろん、解約もできます。

ですが、先ほどお話しした通り、40ヶ月未満の解約は「目減り」や「掛け捨て」となります。

また、一時貸付金制度(「もしも」のとき以外の事業資金の借入制度)も、加入後12ヶ月未満は、利用することができません。

不測の事態による「想定外」の解約とならないよう、ご注意ください。

「お金が出ていく」ということを、忘れずに。

解約手当金は、課税される。

解約時に受け取る「解約手当金」は、課税されます。

法人の場合は「益金」、個人事業主の場合は「事業所得」です。

納付する「掛金」が全額経費となる一方、受け取る「解約手当金」は課税されるということです。

入口で節税、出口で課税。
課税の繰延ですね、、、。

したがって、「解約のタイミング」をしっかりと考えることが重要です。

解約のタイミング、、、?

例えば、「赤字が出たとき」や「役員退職金などを支給するタイミング」(法人の場合)で解約するなど。

解約手当金を「赤字」や「役員退職金」と相殺できますし、赤字の際の資金調達にもなります。

過去の赤字と相殺することもできますね。
法人は10年、個人事業主は3年です。

また、税率が高い(利益が大きい)事業年度等に掛金を納付し、税率が低い(利益が小さい)事業年度等に解約する、、、ということも。

税率の差を利用します。

所得税は、利益が大きくなるにつれ段階的に税率が上がる「超過累進税率」ですし、法人(中小法人)も「年800万円以下」(約23%)と「年800万円超」(約33%)とで税率が違いますからね。

いずれにしても、解約のタイミングは重要です。

タイミングを間違えると、かえって税負担が重くなることもありますので、ご注意ください。

解約のタイミングをイメージできるかどうか、、、。
特に、個人事業主の方は要注意です。加入は慎重に。

解約すると、2年間は経費にならない。

倒産防止共済をいったん解約すると、再加入しても、2年間は「掛金」が経費になりません。

令和6年10月1日以降の解約からです。(令和6年度税制改正)

改正の理由は、『節税のみを目的とした「解約と再加入」が増えてきたから、、。』だとか。

『その「解約と再加入」は、本来の目的のためではないよね、、、。』ということでしょうか。

確かに、本来の目的は、連鎖倒産を防ぐこと。

いったん解約してからの「再加入」では、共済金借入可能額も減少し、連鎖倒産への備えが不安定になるというのも事実です。(しばらくは、掛金積立額も少ないので)

でも、出来る限り有効活用したいですよね、、、。

いずれにしても、解約後、再加入を検討する際は、ご注意ください。

解約後の2年間をどうするのか、、、ですね。

運用益はない。

倒産防止共済に、「運用益」はありません。

40ヶ月以上の掛金納付で、「掛金総額の100%」が戻ってくることはあっても、そこに「運用益」はつかないということです。

「投資」ではなく、「貯蓄」です。

倒産防止共済は、「いざ」というときのセーフティネット。

資産を増やすことを目的とした制度ではありませんので、ご注意ください。

まとめ

今回は、『倒産防止共済、、、デメリットや注意点は?』について解説しました。

倒産防止共済には、メリットだけではなく、デメリットもあります。

デメリットについても、しっかりと理解したうえで、加入の検討をしてみてください。

安易な加入はNGです。
かえって損をすることもありますので、ご注意を。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

倒産防止共済のデメリット
  • セーフティネットは、無利子ではない。(けっこう、がっつり)
  • 40ヶ月未満の解約は、「目減り」や「掛け捨て」に。(特に、短期解約はNG)
  • 毎月お金が出ていく。(資金繰りに注意)
  • 解約手当金は課税される。(解約のタイミングが重要)
  • 解約後2年間は、経費にならない。(令和6年度税制改正)
  • 運用益はない。(「投資」ではない)

このブログは、更新日時点における法令等に基づいて作成しています。