インボイス制度と帳簿の記載事項。まとめ。

インボイス制度

インボイス制度で必要となる帳簿の記載事項。例外措置やら経過措置やらで、微妙に違う、、、?

こんにちは。税理士の城戸です。

今回は、そんな疑問を持たれている方(個人事業主&法人)向けの記事です。

インボイス制度で必要となる帳簿の記載事項について、これまでのまとめです。

例外措置に経過措置、、、色々あって、ごちゃごちゃしてきますね。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

前回のブログは、こちら。

原則

まずは、原則から。

インボイス制度で必要となる帳簿の記載事項は、次のとおりです。

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 対価の額

インボイス制度開始前と、同じ、、、?

そうですね。

帳簿の記載事項については、インボイス制度開始後も、原則同じです。

上記の記載事項を満たした帳簿とインボイスの保存で、仕入税額控除の適用を受けることができます。

例外措置や経過措置の適用を受けない場合ですね。

公共交通機関特例など

インボイス制度の例外措置(公共交通機関特例や自動販売機特例など)の適用を受ける場合、必要となる帳簿の記載事項は、次のとおりです。

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 課税仕入れの相手方の住所又は所在地
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 対価の額
  • 例外措置の対象となる、いずれかの取引である旨

基本的には、原則(これまで)の記載事項と同じ。

下線部分が、追加で必要となる部分です。

留意点

『課税仕入れの相手方の住所又は所在地』

次の取引については、『課税仕入れの相手方の住所又は所在地』の記載は不要です。(もちろん、記載していてもOK)

  • 公共交通機関特例
  • 自動販売機特例
  • 切手を貼って郵便ポストに投函したもの
  • 回収特例(3万円未満のもの)
  • 出張旅費等特例
  • その他一定のもの

自動販売機特例や回収特例(3万円未満のもの)については、令和6年度税制改正により、新たに追加された部分です。

令和6年度の税制改正事項ですが、令和5年10月1日以降の取引からその記載がなくても、特に問題ありません。

結局のところ、一部の取引を除いては、ほぼ記載不要という感じですね、、、。

『例外措置の対象となる、いずれかの取引である旨』

例えば、次のような記載です。

『3万円未満の鉄道料金』

『自販機』『ATM』

『入場券等』など。

ちなみに、自販機の場合、『課税仕入れの相手方の氏名又は名称』も『自販機』でOKです。

帳簿のみの保存で、仕入税額控除が可能

インボイス制度の例外措置の適用を受ける場合は、上記の記載事項を満たした帳簿のみの保存で、仕入税額控除の適用を受けることができます。

消費税の計算上、インボイス等の保存は不要です。

例外措置の対象となる取引は、そもそも、インボイス等の交付を受けることは困難ですからね。

なお、インボイス制度の例外措置については、下記ブログで詳しく解説しています。

ぜひ、参考にしてみてください。

少額特例

少額特例の適用を受ける場合、必要となる帳簿の記載事項は、次のとおりです。

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 対価の額

原則(これまで)の記載事項と同じです。

『少額特例の適用がある旨』といった記載も、必要ありません。

必要ないんですね、、、。

少額特例とは、一定規模以下の事業者が行う少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を認めるというもの。

令和11年9月30日までの経過措置です。

先ほどの例外措置と同様、上記の記載事項を満たした帳簿のみの保存で、仕入税額控除の適用を受けることができます。

少額特例については、下記ブログで詳しく解説しています。

ぜひ、参考にしてみてください。

免税事業者等からの課税仕入れ

免税事業者等(インボイス発行事業者以外の者)からの課税仕入れについても、一定割合(80%又は50%)の仕入税額控除の適用を受けることができます。

10億円を超えるものでない限り、、、です。(令和6年度税制改正)

少額特例と同じく、令和11年9月30日までの経過措置です。

令和5年10月1日〜令和8年9月30日までが、80%。

令和8年10月1日〜令和11年9月30日までが、50%です。

この経過措置の適用を受ける場合、必要となる帳簿の記載事項は、次のとおりです。

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 対価の額
  • 80%控除又は50%控除の特例を受ける旨

基本的には、原則(これまで)の記載事項と同じ。

下線部分が、追加で必要となる部分です。

留意点

『80%控除又は50%控除の特例を受ける旨』 

摘要欄等に☆等のマークを記載して、欄外に「☆は80%控除対象」「☆は免税事業者からの仕入れ」等と記載してもOK。

『軽減税率の対象品目である旨』の記載についても、同様です。

請求書等の保存も必要

この経過措置の適用を受けるためには、上記の記載事項を満たした帳簿だけではなく、請求書等の保存も必要です。

インボイスではないものの、免税事業者等から交付を受ける請求書等の保存も必要ということです。

例外措置や少額特例とは異なる点です。

帳簿のみの保存ではないので、ご注意を。

なお、請求書等には、次の事項の記載が必要です。

  • 請求書発行者の氏名又は名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

スーパーやコンビニ、飲食店、タクシー等(不特定多数の者に対して販売等を行う事業者)から交付を受ける請求書等については、『書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称』の記載は無くてもOKです。

従来の請求書等と同じですね。

まとめ

今回は、『インボイス制度と帳簿の記載事項。まとめ。』について解説しました。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

  • 帳簿の記載事項は、原則同じ。
  • 例外措置は、『課税仕入れの相手方の住所又は所在地』『例外措置の対象となる、いずれかの取引である旨』の記載が追加で必要。
  • ただし、『課税仕入れの相手方の住所又は所在地』は、記載不要となる取引が多い。
  • 少額特例は、これまで通り。(追加の記載事項無し)
  • 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置は、『80%控除又は50%控除の特例を受ける旨』の記載が追加で必要。
  • 例外措置と少額特例は、帳簿のみの保存でOK。
  • 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置は、帳簿と請求書等の保存が必要。
参考サイト

このブログは、更新日時点における法令等に基づいて作成しています。