少額特例とは?少額の判定単位についても解説!

インボイス制度

こんにちは。税理士の城戸です。

今回は、インボイス制度の経過措置の1つ、『少額特例』について。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

消費税の課税事業者及び原則課税を前提としています。
立場としては、買い手側です。

前回のブログは、こちら。

帳簿のみの保存で、仕入税額控除が認められる場合がある。

インボイス制度開始後は、原則として、一定の事項を記載した帳簿及びインボイス等の保存が仕入税額控除の要件となります。

ただし、帳簿のみの保存で、仕入税額控除の適用を受けることができる場合があります。

次の場合です。

  • 一定規模以下の事業者が行う少額(税込1万円未満)の課税仕入れ
    ➡️少額特例(経過措置)
  • インボイス等の交付を受けることが困難な一定の取引
    ➡️例外措置

このうち、今回は、『少額特例』について解説します。

仕入税額控除とは?
  • 消費税額の計算上、「売上げた時に受け取った消費税」から「仕入れた時に支払った消費税」を控除すること。
課税仕入れとは?
  • 商品の購入、機械や建物等の事業用資産の購入又は賃借、運送等のサービスの購入その他事業のための購入のこと。
    ただし、次のものは課税仕入れに含まれません。
    ・土地の購入などの非課税取引
    ・給与や賃金など課税対象とならないもの

参考:国税庁No.6355 課税売上げと課税仕入れ

例外措置については、下記ブログで解説しています。

少額特例(経過措置)

少額特例とは、一定規模以下の事業者が行う少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を認めるというものです。

令和5年度の税制改正事項ですね。

適用対象者は?

適用対象者は、次のとおり。

  • 基準期間における課税売上高が1億円以下 又は 特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者。

基準期間とは、個人事業主は前々年、法人は前々事業年度のこと。

特定期間とは、個人事業主は前年1月1日から6月30日までの期間、法人は前事業年度開始の日以後6月の期間です。

法人は、事業年度が1年の場合ですね。

なお、特定期間における課税売上高については、課税売上高に代えて、特定期間の給与等支払額の合計額で判定することはできません。

納税義務の判定とは異なりますので、ご注意を。

また、「又は」なので、いずれかに該当すればOK。

新たに設立した法人で、その課税期間の基準期間がない場合は、特定期間の課税売上高が5千万円を超えたとしても、少額特例の適用対象者となります。

適用対象期間は?

適用対象期間は、次の期間です。

  • 令和5年10月1日から令和11月9月30日までの期間。

制度開始後6年間の経過措置です。

事業年度単位や課税期間単位ではありませんので、ご注意ください。

令和11年9月30日までの課税仕入れが対象、ということですね。

ちなみに、課税仕入れの相手方は、インボイス発行事業者でも免税事業者でも個人でもOKです。

課税売上高とは?
  • 課税取引の売上金額(商品の売上、機械や建物等の事業用資産の売却など)と輸出取引などの免税売上金額の合計額から、売上返品等の合計額を控除した金額。(税抜金額)
  • 土地の譲渡などの非課税取引や、国外取引など課税対象とならないものは含まれません。

少額特例の、少額とは?

少額(税込1万円未満)かどうかは、1商品ごとの金額ではなく1回の取引の金額で判定します。

以下、具体例です。(インボイス制度Q&A 問112より。)

  • 5,000円の商品を10月10日に購入、7,000円の商品を11月7日に購入した場合。
    ➡️それぞれ1万円未満の取引で、少額特例の対象 
  • 5,000円の商品と7,000円の商品(合計額12,000円)を同時に購入した場合。
    ➡️1万円以上の取引で、少額特例の対象外 ❌
  • 1回8,000円のクリーニングを10月10日に1回、11月7日に1回行った場合。
    ➡️それぞれ1万円未満の取引で、少額特例の対象
  • 月額100,000円の清掃業務(稼働日数:12日)(8,333円/日)を外注した場合。
    ➡️1万円以上の取引で、少額特例の対象外 ❌

最後の清掃業務については、月単位の取引と考えます。
100,000円の取引ですね。

帳簿の記載事項

少額特例の適用を受けるための帳簿の記載事項は、次のとおりです。(今までと同じです。)

  • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 対価の額

なお、少額特例の適用がある旨の記載は、必要ありません。

例外措置を適用する場合などとは、異なりますね。

帳簿の保存(7年間)も忘れないようにしましょう!

おわりに。

今回は、インボイス制度の経過措置の1つ、『少額特例』について解説しました。

ぜひ、参考にしていただけるとうれしいです。

少額特例とは?
  • 一定規模以下の事業者が行う少額の課税仕入れについて、帳簿のみ保存で仕入税額控除の適用を認めるもの。
  • 適用対象期間は、令和5年10月1日から令和11月9月30日までの期間。(経過措置)
  • 少額(税込1万円未満)の判定は、1商品ごとではなく1取引ごとで。

参考:インボイス制度について

このブログは、更新日時点における法令等に基づいて作成しています。